ルイ・マルを愛し、トリュフォーから崇拝され、ピエール・カルダンに一目惚れし、オーソン・ウェルズと笑った。約30年にわたりフランス映画界のトップに君臨する女優ジャンヌ・モローの本邦初の評伝。
■概要
『死刑台のエレベーター』『突然炎のごとく』『ニキータ』など100以上の映画に出演した女優の軌跡をたどる。解説は川本三郎、カバー写真は世界的フォトグラファーのヘルムート・ニュートン。
■主な内容
1「もし母が、もう少し早く父と別れていたら、私はイギリスの女優になっていたでしょうね」
修道女になりたい/イギリスの痕跡/セックスについてはなにも知らなかった/女優になりたいと思ったとき
2「演じるというのは、職業ではなく、生き方なの。片方がもう一方を完成させるの」
初めての役/妊娠、結婚、出産/TNPへの移籍/ルイ・マルとの出会い
3「女優になっていなかったら、私はヒステリーになっていたかもしれない」
最初の出演映画/舞台女優としての成功/引き出された才能
4「世間は、映画の中で風変わりな人物を演じる私を見すぎているのよ」
ルイ・マルとの破局/トリュフォーとの昼食会/国を旅するように男たちのなかを行く
5「私は自分がやりたくないことはわかっている。
問題は、自分がやりたいことを、いつもわかっているわけじゃないってことなの」
息子ジェロームの事故/嫌っていた『夜』の役/不朽の名作『突然炎のごとく』/ピエール・カルダンとの出会い
6「彼女は素朴にも優雅にも、温かくも辛辣にもなれる」オーソン・ウェルズ
映画作りは愛の形の一つ/オーソンは尊敬していたから引き受けた/百パーセントの女
最高の恋人
7「きみは風まかせで飛んでいる羽根のようだ」ピエール・カルダン
隠れ家での生活/歌うのは、もう一人の私/『鬼火』の成功/スペインのお父さん
8「人を知るには、その人と寝て見るのがいちばんじゃないかしら」
愛情と男女関係の哲学者/『マタ・ハリ』は彼女の物語でもある/あがり性だったオーソン・ウェルズ
9「私たちは戦友のようなもの。仲がいいときも悪いときもあったわ」
ブリジット・バルドーとの共演/苦痛だった『マドモアゼル』の女教師役/ロマンスの噂に彩られた『ジブラルタルの追想』/本当は監督がやりたい
10「フランス人の私の死体を抱くなんて、ドン・ルイスもかわいそうに」
離婚訴訟騒動/殺人者を演じる/週三回のセラピー/躁鬱気質/プラハの春
11「私は自然のサイクルを、成熟のプロセスを信じているわ。
晴れた日もあるけれど、個人的に太陽と会うことはできないのよ」
ハリウッドへ旅立つ/出るはずだった映画/一日に五回着替える/オーディオ・ヴィジュアル誌の出版
12「みんな好きなように一緒になるのよ。年齢差はそれを見る人の心にあるの」
モローの女友達/ピエール・カルダンとの別れ/印象的な役だった『バルスーズ』/息子との関係
13「ペーター・ハンクの文体と詩が大好きだった。
それが大好きなら彼のことを好きになるのは自然じゃないかしら」
サンフランシスコ映画祭/新人監督との仕事/カンヌ映画祭の委員長/父親アナトールの死
14「人の魂は、広大な未知の国みたいなものよ」
女性映画として宣伝された『リュミエール』/本格的なハリウッド映画『ラスト・タイクーン』/アラン・ドロンとの再会
15「人生はおもしろい地形の連続、人は自分でその地図を描くのよ」
タンゴは二人じゃなくては踊れない/二作目の監督作品/引きこもりの時間
16「同性愛と異性愛にはなんのちがいもないわ。性的な人間かどうかだけよ」
十万枚のレコードを売る声/ファスビンダーとの出会いと死/どこのドアから入ってもかまわない
17「人生は航海、死は宇宙のすべての生命に起きる自然な事故だと見ているの」
映画女優の運命に引きつけられる/いつ死が訪れても早すぎる/障害最悪の劇評
18「自分のグラスにはまだ半分残っていると思うことにしたの、もう半分しかないとは思わずに」
声、存在、カリスマ性/更年期障害に苦しむ/限界なんてない
19「みんなと同じように私もすべてを持っている。最高の部分も最低の部分も」
リュック・ベンソンとの仕事/ジャンヌがいなかったら撮れなかった/ロシアでの撮影/マストロヤンニとの三十年ぶりの共演/その場で引き受けた『愛人/ラマン』のナレーター
20「ある午後、ノルマンディで彼女と五分話しただけで、
数十年間ため込んだ胸のつかえがきれさっぱり取れたんだ」アレックス・ギネス
フランスで喝采をあびた『海を渡るジャンヌ』/死ぬまで働くつもり/年をとることの特権/同じ場所にとどまるつもりはない/いちばんおもしろいのは、これからもの自分
[解説]“ミステリアス”ジャンヌ 川本三郎
マリアンヌ・グレイ
ロンドン、パリ。ロサンジェルスを拠点に、主に映画関係を手掛ける伝記作家であり、フリーのジャーナリスト。これまでにジェラール・ド・パルデューの伝記を含む7冊の本を出版。雑誌やテレビなどでも幅広く活躍している。
小澤瑞穂
東京生まれ。立教大学英米文学科卒業。アメリカ留学後、エール・フランスのスチュワーデスを経て、フリーの翻訳家となる。主な訳書としてエイミ・タン『ジョイ・ラック・クラブ』『キッチン・ゴッズ・ワイフ』、クリストファー・アンダーセン『マドンナの真実』他多数。著書に『やっとひとり』などがある。