韓国の女性たちから絶大な支持を得るベストセラー作家、イム・キョンソンの真骨頂たる恋愛小説。


エッセイ『態度について』『リスボン日和 十歳の娘と十歳だった私が歩くやさしいまち(原題:やさしい救い)』や、小説『ホテル物語 グラフホテルと5つの出来事』など、毎年1作以上、これまでに21作品を世に送り出している韓国のベストセラー作家イム・キョンソン。ぱらりBOOKSの邦訳第3弾は、イム・キョンソンワールドの真骨頂ともいえる恋愛小説『そっと呼ぶ名前』の登場です。



チョン・セランも絶賛する卓越した「人間描写」


イム・キョンソンは、全身で人生を丁寧に濾過して、真実と真心をそっと取り出すような作家だ。短い文章を書くときも、長い文章を書くときも、エッセイでも小説でも、人がつい目を背けたくなるような領域までしっかりと見つめ、そこで見つけたものを飾らずに言葉にする。洗練されているけれど、決して美化しない。それが20年以上にわたって、韓国で唯一無二の作家として、読者からの信頼と愛情を一身に集めている理由なのかもしれない。


書くものに合わせて姿を変えていく作家だが、愛の光と影に対する探求には、一貫した激情を抱いており、読んでいる私たちの心も一緒に揺さぶられる。ずっと一緒にいる家族への愛も、惹かれずにはいられない恋人への愛も、美しく複雑で、到底要約できない側面をそのまま描き出す才能に、ただただ感心してしまう。


チョン・セラン(小説家)



あなたにとって、“そっと呼びたくなる”名前は何ですか?


まっすぐな愛、耐える愛、傷ついた愛…。
愛には、悲しみと美しさが同居している。誰かを深く愛する時、幸福感に満たされる一方で、ふとした瞬間に不安や虚無感に襲われることも。そんなとき、心の奥から浮かんでくる名前とは…。先輩との関係に悩んでいる30代の女性が、偶然出会った年下の男性から情熱的な愛を向けられ、2人の男性の間で揺れ動いていく。女性の心を赤裸々に綴った大人のための恋愛小説です。



3人の男女が織りなす「大人の愛」


20代、30代、そして40代の、それぞれの登場人物が示す、純粋で切ない愛に胸を締めつけられます。性格も年齢も育った環境も異なる3人が、人生にどう向き合っていくかという姿が赤裸々に描かれ、「人を愛しながら生きていく」ということを深く考えさせられます。一方で、登場人物たちは「建築」や「造園」といった専門的な仕事に向き合いながら、自分の信念や倫理観と誠実に向き合い、誰かを想うように働いていて、その姿を通じて、「働くことと愛することの間にある深いつながり」が自然と浮かび上がってきます。住んでいる家やお気に入りのインテリア、育てている植物など、ライフスタイルの細部が丁寧に描かれているのもイム・キョンソン作品の魅力のひとつです。日々の営みを通して、何を大切にして生きていくかという、もうひとつのテーマにもご注目ください。





【冒頭部分を試し読みする】

『そっと呼ぶ名前』
イム・キョンソン 著
すんみ 訳
四六判並製 168頁
本体1600円+税



あらすじ


設計事務所「コード・アーキテクツ」で働く建築士のスジンは、休日出勤で出社したある日、オフィスビルにある室内庭園の造園作業に来ていたハンソルと偶然出会う。ハンソルはスジンに一目惚れするが、スジンの心には長年思いを寄せてきた建築士の先輩・ヒョクボムがいた。8歳年下のハンソルは、まっすぐで透き通るような愛情をもってスジンに近づいてくるが、スジンは距離を置こうと努力する。けれど、過去の傷によって心に壁を築いているヒョクボムとの関係に孤独を感じていたスジンは、ハンソルのひたむきな愛に次第に心を揺さぶられていく…。


登場人物


スジン(36歳)
“耐え、受け入れる愛”
設計事務所に勤める建築士。愛で傷ついた過去を持つ彼女は、他人の痛みを受け止める強い“大人”として振る舞う。たとえ自分が傷ついても、先に譲ること、自分を差し出すこと―、それが彼女にとっての愛。


ハンソル(28歳)
“ひたすらに澄んだ、まっすぐな愛”
感情に正直な、心優しい造景家。自分の持つすべての陽だまりで、好きになった人を全力で照らす。無邪気さを持っているが、相手を気遣う成熟さも持ち合わせている。スジンに一目惚れし、彼女を温かく包み込む。


ヒョクボム(44歳)
“傷を経験した後の、責任ある愛”
設計事務所に勤めるスジンの先輩建築士。過去の経験から心に壁を持っているが、責任感を持って関係を築こうと努力する、複雑で人間味あふれる人物。




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イム・キョンソン

韓国ソウルに生まれ、横浜、リスボン、サンパウロ、大阪、ニューヨーク、東京で成長、10年あまりの広告会社勤務等を経て、2005年から専業として執筆活動。著書にエッセイ『母さんと恋をする時』(2012)、『私という女性』(2013)、『態度について』(2015)、『どこまでも個人的な』(2015)、『自由であること』(2017)、『京都に行ってきました』(2017)、『私のままで生きること』(2023)、小説『ある日、彼女たちが』(2011)、『覚えていて』(2014)、『私の男性』(2016)、『そばに残るひと』(2018)、『そっと呼ぶ名前』(2020)、『ホテル物語』(2022)、『言い残した言葉』(2024)ほか多数。歌手でもあり作家でもあるヨジョとは『女性として生きる私たちに│ヨジョとイム・キョンソンの交換日記│』(共著:2019)も刊行(NaverAudioclipで「ヨジョとイム・キョンソンの交換日記」を配信)。邦訳に『村上春樹のせいで│どこまでも自分のスタイルで生きていくこと│』(渡辺奈緒子訳:2020)がある。独立した個としてそれぞれが誠実に、自分らしく生きることをテーマにしたエッセイを多く書き、小説ではもっとも大切な価値観として「愛」を見据え、恋愛を主に扱う。



すんみ

翻訳家。早稲田大学文化構想学部卒業、同大学大学院文学研究科修士課程修了。訳書にチョン・セラン『屋上で会いましょう』『地球でハナだけ』『八重歯が見たい』(以上、亜紀書房)、キム・グミ『あまりにも真昼の恋愛』『敬愛の心』(以上、晶文社)、ウン・ソホル他『5番レーン』(鈴木出版)、キム・サングン『星をつるよる』(パイ インターナショナル)、ユン・ウンジュ他『女の子だから、男の子だからをなくす本』(エトセトラブックス)など、共訳書にイ・ミンギョン『私たちには言葉が必要だ』(タバブックス)、チョ・ナムジュ『彼女の名前は』『私たちが記したもの』(以上、筑摩書房)などがある。




【シリーズ連載】私のイム・キョンソン


第1回:チョン・セラン(小説家)

第2回:熊木 勉(天理大学国際学部 教授)

第3回:金承福(株式会社クオン 代表取締役)

第4回:すんみ(翻訳家)


Title Listイム・キョンソンの本


  • そっと呼ぶ名前
    イム・キョンソン著 すんみ訳
    カバーイラスト:北住ユキ
  • ホテル物語
    イム・キョンソン著 すんみ訳
    カバーイラスト:北住ユキ
  • リスボン日和
    イム・キョンソン著 熊木勉訳
    カバーイラスト:北住ユキ









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